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Scene List

それは、大学生活も始まり
天城家での生活にも少しずつ慣れ始めた、4月8日の事。

リビングに顔を出すと、遥海さんがちょうど洗い物を終えたところだった。

【遥海】「あらあら、美羽ちゃんね。良かったら、お茶でも飲む?」

【美羽】「いいんですか?」

【遥海】「わたしが飲みたかったの。お付き合いしてくれると嬉しいわ」

【美羽】「そういう事なら、喜んで!」

遥海さんが紅茶を淹れてくれたので、私達はソファに座ってそれを飲む事にした。
お茶請けは、遥海さんお手製のクッキー。

【遥海】「美羽ちゃん、明日はお仕事?」

【美羽】「いえ、グリララのライブはないですし……引っ越し疲れを癒せって言われちゃって。1日オフです」

【遥海】「あら、そうなのね」

【美羽】「でも、特にやる事がないから……自主練でもしようかなーって思ってるんです」

【遥海】「ふふ。あなたは練習熱心ねえ」

お茶を飲みながら微笑んでいた遥海さんだったけど、急に真顔になってしまった。
しかも、わずかに首を傾げている。

【美羽】「遥海さん?」

【遥海】「そうよね、今の時期ならきっと……ふふ、いいわよねえ」

【美羽】「あの……」

【成海】「あれ? 母さんに美羽ちゃん。お茶飲んでたの? いいな~。ねえ、俺も飲みたい」

成海君は今お風呂から出たみたいで、頬がうっすら赤くなっていた。

【遥海】「いいわよ。ちょっと待っててね」

遥海さんの考え事は終わったみたいで、ソファから立ち上がると、キッチンへ消えた。
入れ替わるように、成海君が向かいに座る。

【成海】「美羽ちゃんが来てから、母さん、毎日楽しそうなんだよね」

【美羽】「そうなの?」

【成海】「うん。母さん、ずっと娘が欲しかったからだと思う」

【遥海】「あらあら、なんの話? お母さんも混ぜてちょうだい」

そんな何気ない話をしながら私達は、夜のお茶会を楽しんだ。

――翌日。

あくびをしながらリビングへ下りると、遥海さんが鼻歌を歌いながら料理をしていた。
でも、朝ごはんはすでに食卓へ並んでいる。

【美羽】「おはようございます。遥海さん、まだ何か作ってるんですか?」

【遥海】「これはお昼のお弁当よ」

【美羽】「もうお昼の準備ですか?」

【遥海】「みんなで食べるから、たくさん作らなくちゃいけなくて。あ、後で美羽ちゃんも手伝ってね」

遥海さんが『手伝って』と言うのは珍しい。

【美羽】「あの、一体どういう事ですか?」

不思議に思っていると、遥海さんは振り返り、嬉しそうな顔で笑った。

【遥海】「美羽ちゃんの歓迎会を兼ねた、お花見をするのよ」

【美羽】「歓迎会……お花見!?」

突き抜けるような青空を彩るピンク色に、感嘆の息が溢れる。

【美羽】「綺麗……!」

【成海】「わあ……! もう葉桜になっちゃってるけど、綺麗だね」

成海君は子どものように無邪気な顔ではしゃぎながら桜並木の中を歩いていく。

時々飛び跳ねては、散っていく花びらを捕まえようとしていた。

【有紀】「成海ー、あんまりはしゃいで転ぶなよ」

【成海】「大丈夫、このくらいで転ばないよ~」

【有紀】「本当かよ……」

【忍】「成海も子どもじゃないんだ。大丈夫だろう」

【夕星】「有紀は心配しすぎなんだよぉ」

【輝成】「有紀くんは、俺より父親らしいんじゃないか?」

【遥海】「ふふ。ゆきちゃんならきっといい父親になれるわね」

【龍雄】「あ、ママさん。その荷物俺が持ちますよ」

【遥海】「あら、ありがとう。たっちゃん」

【龍雄】「いえいえー、お気になさらず」

私の歓迎会と名を冠したお花見には、遥海さんの命令によって、オフだったapメンバー全員に龍君まで来てくれた。

(……命令って言ったのは有紀だけど)

近くにお花見が出来る公園があって、遥海さんはどうしてもここでお花見がしたかったらしい。

【美羽】「私、お花見って初めてです」

【忍】「そうなのか。意外だな」

【美羽】「アメリカでの生活が長かったから、こういう機会に恵まれなかったんです。だから、今日は遥海さんに感謝です!」

【遥海】「ふふっ、思いきって誘ってみて良かったわ」

【輝成】「よーし、この辺りなら桜もよく見えるし、邪魔にならないかな。忍くーん、手伝ってくれ」

【忍】「はい。有紀も手伝え」

輝成さんと黒沢さん、有紀の3人でレジャーシートを2枚敷いて、それを石で止めておく。

【夕星】「わーい、僕いっちばーん♪」

【美羽】「あ! ちょっと……」

【成海】「俺にっばん~♪」

【美羽】「成海君まで……」

【遥海】「美羽ちゃんも、早くいらっしゃい」

【美羽】「はーい!」

手招きされ、私も靴を脱いでレジャーシートへ座る。

【遥海】「さあ、じゃあお弁当を……」

【輝成】「さあ、飲むぞー!」

遥海さんの声にかぶせ、輝成さんは持ってきたクーラーボックスから缶ビールを取り出した。
それを有紀と龍君も当たり前のように出す。

【有紀】「かんぱーい!」

【龍雄】「かんぱーい!」

【成海】「も~、すぐこれだよ。いつでもどこでも場所なんかお構いなしだよね」

【美羽】「なんだかこの光景も、見慣れちゃったかも」

【遥海】「せめて、いただきますしてからにしてほしかったわ」

【輝成】「はっはっは! すまないな。ビールが俺を待ちきれないみたいだったんだ」

【遥海】「あなたが、ビールを待ちきれなかったんでしょう。今日のお花見は、美羽ちゃんの歓迎会でもあるのよ」

遥海さんが珍しく拗ねている。
そんな遥海さんの横から夕星が顔を突き出した。

【夕星】「はるはる、酔っぱらいはいいから、さっさと食べようよぉ~。僕、お腹すいちゃった♪」

【遥海】「用意するから待っててね」

遥海さんはお重やランチバスケットを次々広げていく。

【忍】「これはまた……いつも以上にすごい量ですね」

【遥海】「ふふ。美羽ちゃんも手伝ってくれたから、張り切っちゃったの!」

【遥海】「さあさあ、いただきますしましょうね。 おててを合わせて~ぱっちん!」

言われた通り、みんなで手を合わせて――、ぱっちん、をする。

【遥海】「いただきます」

【全員】「いただきます」

【夕星】「あ~お腹空いたぁ~! 僕、唐揚げもーらい!」

【美羽】「ああ! 一番大きいの取った!」

【夕星】「早いもの勝ちだもんね~」

夕星は得意げな顔で次々と唐揚げを食べている。

【成海】「あーん、むぐむぐ……うん、おにぎりおいしい~」

【有紀】「ビールもうまいぞー」

【忍】「お前は、せめて何か腹に入れてからにしろ」

黒沢さんは紙皿に料理を取ってあげ、それを有紀に渡していた。

【龍雄】「忍~、俺にも取ってよ~」

【忍】「甘ったれた声を出すな。まったく」

文句を言いながらも、黒沢さんはやっぱり取ってあげている。

【成海】「……わっ、このアスパラの肉巻おいしい」

【遥海】「それは、美羽ちゃんが作ったのよ」

【成海】「ホントに? 美羽ちゃん、さすがだね。これすごくおいしいよ」

【美羽】「喜んでもらえて、良かった」

(成海君がおいしいって言ってくれた! 嬉しい……!)

内心大喜びだけど、それは隠して笑顔を見せる。

【成海】「ねえねえ、有紀達も食べなよー。じゃないと、俺がぜーんぶ食べちゃうよ」

【有紀】「食べてるって。ほら……んー、この卵焼きうまいな」

【遥海】「それも美羽ちゃんが作ったやつだわ」

【有紀】「へえ……本当にうまいな。酒によく合う」

【美羽】「おつまみのつもりで作ったんじゃないけどね……」

苦笑していると、風が強く吹いた。

【龍雄】「おおお! 花びらが俺の唐揚げについたー!」

【忍】「食べられないわけじゃないからいいだろ」

【龍雄】「そうなの?」

【美羽】「桜の花びらは、よく塩漬けにして使うんだよ」

【龍雄】「そうなんだー」

話を聞きながらも、龍君は花びらを払っていった。

【夕星】「あー、僕のビールにも入ってるぅ~」

【成海】「あははっ。花びらビールだね」

【夕星】「んん~、たまにはいいかもぉ」

夕星の方はご機嫌らしく、そのまま飲んでしまった。

【龍雄】「パパさん、ビールおかわりー!」

【輝成】「ははは! たつくんも飲むねー。はい、どうぞ」

【龍雄】「ありがとうございまーす」

【有紀】「じゃあ俺もビールおかわりー」

有紀もご機嫌らしく、持っていた紙コップを元気よく掲げた。
けど紙コップはそのまま落下。

【有紀】「あ」

【美羽】「あーあ」

【忍】「まったく……何をしているんだ、お前は」

【成海】「もー、また有紀がビールこぼしたー」

【美羽】「はい、タオル。これで拭いて」

【有紀】「あー、悪いな」

一応悪いとは思っているみたいで、有紀は苦笑しながら私が差し出したタオルでこぼしたビールを拭いている。

【輝成】「はっはっはっ! 有紀くんは本当にビールこぼし魔だなあ」

輝成さんは豪快に笑いながらビールを飲もうとした。
けど、それが口に入ることはなく……。

【輝成】「あ」

【遥海】「もう、あなたまで何やってるの?」

遥海さんは困り顔でもう一枚タオルを取り出し、輝成さんを拭いてあげる。

【夕星】「てるてるもビールこぼし魔だぁ~」

【輝成】「ははは! 有紀くんのが伝染ったかな」

【有紀】「え、俺のせい?」

【美羽】「大丈夫ですよ、輝成さん。有紀のはもう職人芸ですから」

【有紀】「そんな事……ない、よな?」

【忍】「……」

黒沢さんはわざとらしく目を逸らした。

【有紀】「嘘だろ? ……俺、そんなにこぼしてるか?」

【龍雄】「最近は飲んだらすぐこぼしてるよなー」

ビールをこぼした、こぼしてないで、みんな大はしゃぎしている。
その賑やかな雰囲気が、楽しい。

(あ、今度はおにぎりに花びらがついてる)

取らなきゃ、と思って手を伸ばしたら先に夕星がそれを掴んでしまった。

【夕星】「なぁにぃ~? 食べたいのぉ~?」

【美羽】「違うよ。それ、花びらついてるから、取ろうと思って」

【夕星】「ホントだぁ~。まぁ、いいや~。ん~♪ はるはるの作ったおにぎりおいしい~」

夕星は大きな口を開け、一口で食べてしまった。

【遥海】「ふふ、ありがとう。ゆうちゃん」

【成海】「夕星、俺の分は残しておいてよ。あ、美羽ちゃん食べてる?」

成海君は唐揚げ、卵焼き……と、次々口に運んでいく。

【美羽】「もちろん。お花を見ながらごはんを食べるって、新鮮で……いつも以上にごはんが進むね」

【成海】「そうだね。お花見って楽しいな~♪」

成海君は嬉しそうな顔で食べている。そんな彼を見ていると、私は余計嬉しくなってしまう。そこへ、また強い風が吹いた。
最後の花びらが、青空に舞っていく。

(綺麗だな……)

花びらを目で追いかけていくと、1枚がひらひらとこちらへ落ちてきた。それは、ちょうど黒沢さんの座っている場所。

【忍】「ん?」

花びらは器用に黒沢さんのメガネに張りついた。

【有紀】「ぶふっ!」

【夕星】「あはははは!」

【龍雄】「すっげー! ははははは!」

【忍】「な、なんなんだ? どうした?」

【美羽】「く、黒沢さんの……メガネに……桜が……!」

【忍】「む……」

【成海】「あはは、桜の花びらがデザインみたいになってるよ。オシャレだね、忍」

【忍】「笑ってないで取ってくれ。メガネを外したら見えなくなる」

【龍雄】「いやいや! そのままにしとこうよ!」

【忍】「あぁん?」

【龍雄】「うっ! ごめんなさい、調子に乗りました……」

【忍】「まったく……」

【夕星】「僕が写真撮ってあげるよぉ~。はーい、くろくろ笑ってぇ~」

【忍】「おい、やめろ夕星」

【有紀】「ははははは! もーダメだ! 腹痛い!」

【忍】「有紀! お前も笑いすぎだ!」

【輝成】「はっはっは! やっぱりみんなで花見に来て良かったな」

【遥海】「ええ、そうね」

初めてのお花見は本当に楽しくて、私も来て良かったと思った。

ごはんを食べ終えると、私と遥海さんで片付ける。
お酒組は更に黒沢さんが加わり、賑やかさも増した。

そんな中、成海君だけがスマホを取り出し何やらポチポチと打ち込んでいた。

(apのメンバーって、事務所の指示でSNSをしてるんだよね。そこにつぶやいてるのかも)

そう思っていると、成海君は急に目を輝かせスマホを置くと、膝立ちをして空を見上げた。そして両手を掲げると、突然パチンパチンとしはじめる。

【美羽】「な、成海君? どうしたの?」

【成海】「あのね、今Eveに聞いたんだけど……落ちてくる桜を、願い事しながらキャッチ出来たら、その願い事が叶うんだって」

だからチャレンジしているんだ、と胸を張る成海君。

【成海】「う~ん……うまく掴めないな……。あ、ねぇ美羽ちゃんもやってみようよ」

【美羽】「そうだね、面白そう」

私は立ったまま、両手を胸元辺りに持ってきた。
そして、落ちてくる桜を両手で掴まえてみる。

【美羽】「あれ? 上手くいかないな」

【成海】「だよね。簡単にキャッチ出来るかと思ったら案外難しいよ……これ! えいっ! ん! やっ!」

【夕星】「なるなる~、おててぱっちんぱっちんして、何やってるのぉ~?」

【成海】「夕星もやる? 桜の花びらをキャッチしてるんだよ」

お願い事をしながら掴まえる、と説明していると、いつの間にか有紀も話を聞いていた。

【有紀】「へえ、でも……」

【夕星】「ゆっけ。ヒミツのしーだよ」

【有紀】「それもそうだな」

(ん? どうしたんだろう、2人とも)

【有紀】「よし、面白そうだな。やってみるか」

【成海】「かなり難しいよ。酔っぱらいの有紀に出来るかな?」

【有紀】「任せなさい」

【夕星】「僕もやるぅ~」

2人も立ち上がって、空を見上げる。

【成海】「2人とも頑張れ!」

応援している成海君。その後ろに、そっと輝成さんがやってきた。
どうしたんだろうと思ったら、輝成さんは成海君の頭に手を伸ばした。

(あ、成海君の頭に花びらついてる。そっか、有紀達はこれに気づいてたんだ)

輝成さんはクスクス笑いながら花びらを取ってあげ、それを遥海さんへ渡した。

【輝成】「これで成海の願い事は叶いそうだな」

【遥海】「ふふ、そうね」

(2人とも、優しいなあ)

微笑ましく見ていると、有紀と夕星が両手をパチン、と鳴らす音が聞こえた。

【有紀】「ほら、掴まえた」

【夕星】「僕も取ったよぉ~」

【成海】「えぇ~……なんで2人とも1回で出来るの?」

【有紀】「ちゃんと狙いを定めれば……すぐ取れるよ」

【夕星】「なるなるはキョロキョロしすぎなんだよぉ」

【成海】「よーし、じゃあもう1回やる」

【美羽】「私も!」

成海君は意気込んで、またチャレンジする。
けど、1回、2回……とパチパチしても掴まえられない。
同じように、私もなかなか掴む事が出来ない。

【美羽】「1枚に狙いを定めればいいんだよね」

【成海】「うん。狙いを定めて……えいっ」

それは、桜キャッチを始めて何度目かの挑戦。
成海君は勢いよくパチン! と音を鳴らした。

【成海】「あ……! 掴めた……掴めたよっ」

成海君はそっと両手を開く。
手のひらには桜の花びらが1枚乗っていた。

大はしゃぎする成海君。
その姿に、私は思わず笑ってしまう。

【美羽】「あ」

すると、私の目の前に桜の花びらがひらりと舞い落ちてきた。

(よし! 狙いを定めて……)

1枚の花びらを閉じ込めるようにすばやく両手を合わせる。

パチン、という小気味いい音をした両手をそろっと開いてみると――

【成海】「美羽ちゃんもキャッチ出来た? やったね」

【美羽】「うん!」

私の手の中には綺麗なピンク色に色付いた花びらがちょこんと乗っていた。

【美羽】「でも、せっかく桜を掴めたのにお願い事をし忘れちゃったよ」

【成海】「あ……俺もだ。掴む事に必死になって忘れてた」

顔を見合わせ、2人で声を立てて笑う。

それから成海君は喜々とした顔でスマホを弄る。

【成海】「よし、っと。Eveにも報告出来たし、今度は願い事をしながら掴んでみようよ。コツは掴めたから、今度は1回で取れるよね」

【美羽】「うん、そうだね」

私も意気込んでみたけど、さっきのはまぐれだったのか、
私達はまた花びらを掴めなくなった。

【成海】「うーん、さっきはキャッチ出来たのにな~」

【美羽】「さっきと同じようにやってるはずなのにね。おかしいなあ……」

首を傾げながらもう1回、とチャレンジを続けていると、ふいに成海君の頭が不思議な事になっているのに気づいた。
よーく顔を上げて見てみると――。

【美羽】「あ! 成海君の頭に、花びらついてるよ」

【成海】「えっ、本当?」

成海君は、慌てて取ろうとしている。

【美羽】「待って。私が取ってあげるよ」

成海君の頭へ手を伸ばして、花びらを掴む。
その時、大量の花びらが舞い落ちてきた。

【成海】「うわっ! な、何これっ?」

【夕星】「これだけたくさんあれば、掴めるでしょ」

【成海】「これ、夕星がやったの? もー……花びらまみれになっちゃったよ」

言葉通り、花びらに覆われるような成海君の姿に――。

  • 桜の天使みたい、と言う
  • じっと見つめる

CHOOSE : 桜の天使みたい、と言う

【美羽】「成海君、桜の天使みたい」

【成海】「えぇ~、美羽ちゃんも天使なんて言うの?」

【美羽】「あ! ご、ごめんね。桜を背負ってる成海君がそう見えて……」

【美羽】「天使って呼ばれるの、嫌だったよね。でも、なんか成海君がキラキラしてたから」

【成海】「美羽ちゃんになら言われても気にならないよ。 あ、でもそれなら……」

成海君が自分の上に乗った花びらを取ると、私の上に降らせた。
ひらひらと、目の前で花びらが舞う。

【成海】「はい、お揃い。俺が桜の天使なら、美羽ちゃんは桜の妖精だね」

【美羽】「っ!」

あまりに優しく微笑むから、恥ずかしくて……耳まで熱くなっていくのを感じた。

CHOOSE : じっと見つめる

(桜も、成海君も綺麗……)

思わずじっと見つめていると、成海君が急に噴き出した。
どうしたんだろう、と思った矢先――。

【美羽】「っえ!?」

今度は私の上から桜の花びらが落ちてきた。

【夕星】「僕優しいからぁ、なるなるとお揃いにしてあげたよぉ~」

【美羽】「もう、夕星は……! あーあ、桜まみれ」

【成海】「ふふっ、美羽ちゃん可愛いよ」

【美羽】「え……!」

『可愛い』という言葉の贈り物をもらって驚く私に、成海君は楽しそうに笑った。

【遥海】「あらあらあらあら! 2人とも、桜まみれになっちゃったわねぇ」

遥海さんは楽しそうに笑いながら、スマホで私達を撮影する。

【輝成】「はっはっは! 有紀くんがまたビールをこぼしてるぞ」

【龍雄】「あははー、パパさんもこぼしてますよー」

【忍】「お前達は飲み過ぎだ。少し控えろ」

【有紀】「なーに言ってるんだよ。忍。まだまだこれからだろー」

お酒組はこっちに気づいていないみたいで、相変わらず楽しそうにビールを飲んでいた。

【夕星】「はーい、はるはるにも桜のおすそ分けぇ~」

夕星は、遥海さんの上にも桜を降らせた。

【遥海】「ふふふ、桜の花びらのシャワーみたいね。綺麗だわ」

【夕星】「でしょでしょ~」

夕星と遥海さんはニコニコしながら、降らせた花びらを、今度は空へと舞い上げている。それを見ていると、成海君が私の顔を覗き込んできた。

【成海】「美羽ちゃん、楽しいね」

無邪気に笑う成海君に胸が高鳴る。
それを必死に抑えながら、大きく頷いた。

【美羽】「うん!」

すると成海君は、更に嬉しそうに笑ってくれる。

数ヶ月前は、まさか初恋の成海君とこんな風に優しい時間を過ごせると思わなかった。

(だからなのか……)

私にとってこの一瞬、一瞬は、何より輝いていて、何より愛おしく感じた。

【成海】桜の花びらを頭に乗せて、はにかむ美羽ちゃん。その姿が可愛いな、と思った。

【成海】見ていると、胸がほんわかとあたたかくなる。

【成海】美羽ちゃんの頭に乗った花びらを取るのがもったいなくなる。そう思いながらも、1枚、花びらを取ってあげた。

【美羽】「あ……取ってくれたの? ありがとう」

【成海】「これ、俺が持っててもいいかな?」

【美羽】「うん、それはいいけど……花びらなんて、どうするの?」

【成海】「これを持っていれば、願い事が叶うかもって思って。俺と美羽ちゃんだけの秘密だよ。内緒のしー、だからね」

【美羽】「う、うん!」

【成海】美羽ちゃんは何度も頷いてくれたので、俺はほっと胸をなで下ろした。美羽ちゃんの頭に乗った桜の花びら。

【成海】この子に、美羽ちゃんの幸せを願おう。俺の新しい家族が、これからも笑顔でいられますように――。

【成海】俺は願いを込めて、取ったばかりの花びらにキスをした。