【仁菜】「っ、あ……何を……!」

【朔良】「……うざいんだけど」

【仁菜】「っ!」

【朔良】「人が寝てる時に、そばでべらべら喋んな」

檜山さんは、冷たく厳しい表情でわたしを見下ろしてくる。

【仁菜】「……ご、ごめんなさい。
 でも、どうしても檜山さんに……
 あの時のお礼を伝えたかったんです」

【朔良】「興味ない」

【仁菜】「……檜山、さん」

【朔良】「だから、黙ってろっつってんだろ」

【仁菜】「…………」

檜山さんは、まだわたしから離れるつもりがないのか、
視線を逸らしてくれない。

男の人に自由を奪われたこの状況に、
わたしの頭が恐怖で真っ白になっていく。
言葉を発することも出来ない。

【朔良】「ちゃんと黙ってられるじゃん」

【仁菜】「……っ、あ……あの……」

【朔良】「なに」

【仁菜】「……檜山さん、は……わたしが、嫌いですか?」

【朔良】「嫌いも好きもねーよ。
 あんたのことはどうでもいい」

【仁菜】「で、でも、わたしは……
 檜山さんの、友達になりたいんです」

【朔良】「友達?」

檜山さんはしばらく黙った後、鼻で笑った。

その表情の意図がわからず、眉をひそめる。

すると檜山さんは口角をクッと持ち上げ、
どんどん顔を近づけてきた。

わずかだけど、タバコの匂いがする。
それが余計にわたしを緊張させ、身体が強張る。

そんなことお構いなしに、
檜山さんはわたしの耳元に唇を寄せた。

【朔良】「あんたも、どうせ『それ』目的なんだろ?」

(『それ』、って……)

【仁菜】「……!? ち、違います!
 わたしは、そういう意味で言ったんじゃ……!」

【朔良】「別に、俺はそれでもいいけど」

【仁菜】「っ、う、嘘……ですよね?」

【朔良】「嘘に見える?」

【仁菜】「…………ッ、や……!」

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