あれこれと着替えさせられた結果、依都さんが選んだのは、ワインレッドのロングドレスだった。

こんなドレス、誰が着るんだろうと思ってしまうほど大きく胸が開いたデザインだ。

【依都】「どう? こっちの方が君には似合うと思うんだけどな~」

【このは】「でも……。こんなに胸が開いているし足だって出てるし……」

恥ずかしくてためらっているとううん、と依都さんが首を振る。

【依都】「今日はパーティなんだからさ。
これくらい華やかじゃないと映えないってもんでしょ」

【このは】「……分かりました。 じゃあ、このドレスにします」

その瞬間、依都さんの顔に笑みがこぼれる。

【依都】「オレの衣装と同じ色だね。
じゃあ、そのまま ちょっと後ろを向いて」

【このは】「………?」

言われるまま後ろを向く。
さらりと、首にすべる感触があった。

【このは】「あ、あの……依都さん?」

【依都】「いーからいーから。そのままじっとしててよね」

背中から依都さんの声がする。耳たぶに吐息がかかった。

【このは】「あの……一体何を……」

【依都】「動くと留め金がとまらないでしょ」

(何だろう? ネックレスみたいだけど……)

思っていると、背中から声がした。

【依都】「よし、できた! ほらこのは、見てみなよ」

言われて鏡を見る。
ドレスと同じワインカラーの共布で作ったチョーカーだった。

その中央にはつややかな黒曜石。

その周囲にちりばめられたダイヤモンドがキラキラと輝いている。

【このは】「これは……?」

【依都】「胸元が開いたドレスだと首になんかないと寂しいじゃん」

背中越しに依都さんが顔を覗かせる。

【依都】「あ、ちょっと曲がってる。ゆるいのか?このはは首が細いからな~」

その間も、依都さんの指先が首筋に触れたり離れたり……。

【このは】「あ、あの……。くすぐったいんですけど」

【依都】「このはが動くからだろ?いいから少しじっとしてて」

【このは】「……はい」

背中越しに感じる、依都さんの息遣い。

その指先は髪が絡まないように気をつけてくれている。

(やっぱり依都さんて優しいところがあるんだな)

背中から伝わってくる温もりに改めてそう思う。

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