【このは】「……そんな事ないと思いますけど」
思わず、そう呟いていた。
【時明】「どうして?」
【このは】「理由や根拠はありません。
でも……」
【このは】「時明さんだって、きっと誰かを特別に思う気持ちは持ってると思いますよ」
(だって、そうじゃなきゃ寂しすぎるよ……)
【このは】「私がそう思いたいだけなのかもしれませんが……」
こんなに何でもできて、周りを惹きつけてやまない人が誰も特別に思えないだなんて……。
【時明】「ならさ……」
【このは】「はい」
【時明】「そう思うなら、このはが教えてよ」
すっと、頬に手が伸ばされた。
【このは】「と、とき……はる……さん?」
顔を持ち上げられ、時明さんの瞳が真っ直ぐに私を射ぬく。
【時明】「ねえ、教えてよ。俺に」
【時明】「人を特別に愛するってどういう感じなの?」
【このは】「あ……」
何と言えばいいのかわからない。
目を逸らす事も出来ず、私はただ時明さんを見つめた。
【時明】「なんて、ね」
そんな私をどう思ったか。
にこりと微笑みを浮かべて、彼は手を放した。
【このは】「……からかわないでください」
(時明さんの冗談は心臓に悪いよ……!)
私は胸をおさえて溜息を吐く。
【時明】「からかったつもりはないんだけどね。
本当に気になったんだよ」
【時明】「このはの言う、“人を特別に愛する”って事がどんな事なのか」
【時明】「それをこのはなら教えてくれるのかなって」