鳥の鳴き声に優しく起こされて目を開けると、
目の前には柔らかな日差しが差し込んでいた。
(私、いつの間にか寝ちゃってたんだ)
ふと肩を見ると、タオルケットがかかっていた。
夕星かな、と思いながらタオルケットにくるまれていると、
夕星も机に突っ伏して眠っていた。
(寝てていいよとは言ったけど、
ここで寝ろなんて言ってないのに)
だけど、作曲の間中ずっとそばにいてくれた事が嬉しくて、
放ってしまった事が申し訳なくて、胸がくすぐったかった。
夕星の髪は朝日を受け、キラキラと輝いていた。
銀糸みたいなそれに触れてみると、
相変わらずふわふわとしていて気持ちがいい。
すると、眠っていたはずの夕星が私の手首をきゅっと握った。
【夕星】「なに?」
掠れた声が問いかける。
寝起きで体温が高くなった手が、心地良い。
夕星は寝ぼけた目で私を見つめる。
私も机に頭を乗せ、夕星と視線を合わせた。
髪だけじゃなく、あの不思議な色の瞳も輝いて見える。
【美羽】「星が落ちてきたみたい」
【夕星】「じゃあ、食べてみる? 金平糖や綿菓子みたいに甘くないけどね」
【美羽】「甘いだけなんていらないわ」
夕星は顔を上げて、そのキラキラした目を私に近づけた。
星の中に、今、私だけが映っている。
【夕星】「相変わらず生意気だねぇ」
【美羽】「知ってるくせに」
【夕星】「まあね」
【夕星】「だから……あんたにならあげてもいいよ」
【夕星】「僕の星」
【美羽】「えっ……」
【夕星】「……」
微笑む夕星の唇が、柔らかく重なった。
少しカサカサの唇は奪うためじゃなく、
愛おしさを伝えるように触れてくる。
心臓がきゅっと締めつけられる。
まるで、夕星がそこにもキスしたみたい。
私の熱と、夕星の熱が混ざり合い、溶けていく。
(一瞬なんて勿体ない、このまま永遠になってしまえばいいのに)
私の胸が、夕星のためだけに弾けて、歌い出した。
キスは初めてじゃないはずなのに、
まるで初めてのように心臓が高鳴って、苦しくて……
でも、どうしようもない愛おしさがあふれてくる。
夕星にも伝わっているのかな、と目を開けると、
夕星も目を開け、ウィンクをした。
そして、もう少しだけ、と言うように更にきゅうっと唇を押し当てる。
(うん、そうだね。私ももう少しだけ、夕星を感じていたい)
夕星に対して、こんな風に
愛おしく想う日がくるなんて思わなかった。
でも、今はそれが当たり前のように感じる。
まるでそれが、昔からそうだったみたいに。
私の心は今、夕星のためだけに、鼓動している。
そんな私達を、朝焼けの澄んだ空気が、優しく包み込んでくれた。