成海君の手を掴むと、私はフロアの中央へと連れてきた。

そこでは、色とりどりのライトが、忙しなく辺りを照らしている。

その下で、老若男女国籍問わず、いろんな人達が踊っている。

【美羽】「さあ! 私達も踊ろう!」

【成海】「お、踊るの? ここで?」

【美羽】「もちろん! 踊って、嫌な事ぜーんぶ忘れちゃおう! ほら、ほら!」

私が踊り出すと、最初はもじもじしていた成海君も、次第に音楽に乗り始めた。

【成海】「……うん!」


【成海】「あははっ! ダンスなんて久しぶりだよ!」

さっきまでの暗い顔が嘘のように、成海君は楽しそうな顔でダンスしている。

その動きはとてもなめらかで、普段踊る機会のない私でも上手だと感じる。

成海君は、一瞬で場を自分のものにしてしまったのだ。

【龍雄】「成海が踊ってる! 俺も俺もー! 虎も踊ろうぜえ〜」

【虎雄】「おい! 俺まで巻き込むな!」

【龍雄】「いーじゃんいーじゃん!」

【虎雄】「俺はお前らと違って、日本生まれ日本育ちなんだぞ! ダンスなんか……」

【虎雄】「うお! ちょっと! 回すなー!」

【龍雄】「ハハハハハ! いっえーい!」

【成海】「たつもノリノリだね! いえーい!」

(成海君がかっこいいのは前からだけど、

 踊ってる成海君はまた違う雰囲気で……かっこいいなぁ)

恋の熱に浮かされてボーッと見つめていると、

成海君がこちらに手を差し出した。

【成海】「何ぼーっとしてるの?」

【美羽】「えっ……」

【成海】「一緒に踊ろう! 美羽ちゃんが誘ったんだよ? ほーら!」

【美羽】「わっ!」

成海君に手を握られ、一緒になってリズムを刻む。

声ではなく、身体で。

【成海】「最初は照れくさかったけど、すごく楽しいね!」

(成海君、少しは笑顔になってくれた。良かった)

【美羽】「うん、楽しいね」

触れられた手から成海君のぬくもりが伝わって、心臓が大きく高鳴る。

でも、そんな事より今は、この状況を楽しもう!

なんだかたくさんの人から見られている気もするけれど、

別に悪い事はしていないし、問題ない。

【美羽】「あははっ! やっぱり身体動かすのってサイコー!」

【成海】「美羽ちゃん、ダンス上手だね」

【美羽】「そうかな?」

【成海】「そうだよー。ねえ、今度の新曲で踊ってみたら?

みんな、新しい歌姫の姿にびっくりしちゃうよ」

【美羽】「よーし! じゃあ、踊っちゃうぞー!」

【龍雄】「踊っちゃえー! ひゅーひゅー!」

【虎雄】「ひゅーひゅー! じゃねえよ! もういい加減離せ!」

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